紅茶のことしか考えてない
脳みそが茶葉でいっぱい
広い庭園を眺めながら、白磁のカップに香気高い透き通った赤茶で満たして…小さくて可愛らしいお茶菓子をそっと口に入れてマリアージュ…♥
そんな妄想が頭から離れない。
研究会立ち上げ前の話にはなるが、実際のところオリリーヌはどちらかというと辛党。
小学生のころ、父がビールを片手に箸でつまんだ塩辛をねだる。三軒茶屋の三角地帯や町田の仲見世通りにあるちょっと古ぼけた激狭居酒屋が大好き。昨日なんか、あざみ野の「さんぱちや」というホルモンが美味しくて安い焼肉屋でたらふく食べた。
ただいま妊娠後期に入り、約七ヶ月以上アルコールは摂取していないことになる。
カフェインももちろんとっていない。紅茶なんてもってのほか。
お腹にいるのが娘だからだろうか。
味覚が変わった。劇的に変わった。甘いお菓子なんて一口食べれば割と満足するたちだったのに。
妊婦健診や娘の服作りのため出かけた先で出会う厚めのホットケーキや粉砂糖でコーティングされたドーナツが美味しそうでたまらない。
あぁ、甘いお菓子にストレートの紅茶!
しかし、我が姫を守るナイトはわたくしのみ。
甘いお菓子に…デカフェが置いてないから…リンゴジュース…
度々そんなことを繰り返し、妊婦健診の血液検査の結果からついには糖負荷テストを受けることになる。
(結果は問題なかった。)
禁断症状
炭水化物の摂取量や果糖はかなり控えた。
しかし、私の思わぬところに敵は罠を仕掛けてくる。
Twitterで貴族研究の資料を集めるときの検索ワード:茶会、アフタヌーンティー、紅茶、スコーン。
出てくる出てくる、紅茶愛好家の方々。
聞いたこともない横文字の茶葉と茶葉を混ぜ合わせて、「映(バ)える」カップに注いだ写真をうpしている。
店を構えてらっしゃる方の投稿ももちろんあるが、個人的に茶葉を何キログラムも買って楽しんでおられる方もいるのだ。中にはご自身で焼き菓子を作っている方も。
ああ!何ということ!
わたくしはカフェインを摂取できないし、甘い物も山ほどは食べられない!!!
少女漫画だったらレースのハンカチをその涙で濡らすシチュエーションだ。
食べたい・飲みたい・食べたい・飲みたい・食べたい・飲みたい・・
貴族とはほど遠い乞食のような飢えに苦しむオリリーヌであった。
転んでも草根を掴む精神で
オリリーヌは貴族研究会を立ち上げてからというもの毎日がとてもハッピーなのである。妊娠中のマイナートラブルに悩まされても、心はいつでも貴族なのである。
チャスリーヌのこだわり、没落貴族という設定がここでいきてくるのだ。
「茶葉もケーキも駄目なら、茶器を楽しめば良いじゃない」
そう、そうなのだ。小公女セーラのごとく、気高さは物質的な充足でなく妄想で補填するのだ。
こだわった茶葉と色とりどりの茶菓子をたくさん口に含まなくても!至極の茶器に巡りあいたい!!!という気持ちに火がついた。
ここで一言、
「よし、断捨離しよう」
焦りは禁物。素敵なティーセットが入るスペース作りからはじめよう。
そう、まだ私は貴族ですらないメイドの立場だったっけ。いそいそと食器棚の欠けた茶碗と向き合うのだった。